政府の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議が公表した「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策(案)」は、「インターネット・サービス・プロバイダ(lSP)等による閲覧防止措置(ブロッキング)を実施し得る環境を整備する必要がある」と提言しています。 政府は、ブロッキングについて「通信の秘密」(憲法第21条第2項、電気通信 事業法第4条第1項)を形式的に侵害する可能性があるが、仮にそうだとしても、緊急避難(刑法第37条)の要件を満たす場合には、 違法性が阻却されるものと考えられる」として法的整理の考えを示しています。 NTTグループ三社は、政府の「緊急対策(案)」に基づき、「緊急措置」として海賊版サイトに対してブロッキングを行うことを表明し、更に政府に対して法整備を求めています。 私たちは以下の通り、憲法違反の政府の「緊急対策(案)」に反対であり、「緊急対策(案)」の撤回を求めるとともにブロッキングに対する法整備にも反対します。 |
(1)「緊急対策(案)」は、憲法で保障されている基本的人権としての「通信の秘密」や「言論・表現の自由を尊重」の権利を政府の策定した政策で制約できるとしています。いかなることであろうとも、「通信の秘密」や「言論・表現の自由」を制約する理由にはなりません。 (2)ウェブサイトの停止の強制措置は、「検閲」として過去に国際的な反対運動があったため、アクセスするユーザをブロックするというユーザの権利を制限する方法を日本政府は考えだしました。アクセスのブロックは権利の侵害です。 (3)
ISPが通信の秘密を侵害し検閲行為を行なうことになれば、違法行為の当事者となり、政府公認の犯罪がまかり通ることになります。政府の検閲の手先となるような政治的な圧力に屈するべきではありません。 (4)どのサイトを違法と判断するかは、政府が業界を巻き込んで決めるという政府主導になるのは明らかで、政府によるネットアクセスの監視が恒常化され、自由なコミュニケーションが規制されることになります。 (5)ブロッキングを行えば、将来の訴訟対策としてアクセスログなど個人情報を保有し続ける必要があり、訴訟の際はユーザのプライバシー情報を政府に提供することになりプライバシーの侵害は明らかです。 (6)刑法の「緊急避難条項」を拡大解釈して、司法の判断も、立法措置もしないでこの対策を強行しようとしています。改憲、機密保護法や戦争法、共謀罪法など安倍政権の人権を無視した法律や政策をみていると、政府への異論や反対運動がブロックされる恐れがあります。一般的なサイトブロッキングに道を開く危険性があります。 (7)「緊急対策案」は、政府の人権侵害を正当化し、憲法をないがしろにする法制度への道を開くことになります。 |
<インターネット上の海賊版サイトに対するブロッキングの実施について> NTTグループは、これまでも安全・安心なインターネット利用環境の提供に努めてまいりました。この度、コンテンツ事業者団体からの要請並びに2018年4月13日に開催された知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議において決定された「インターネット上の海賊版対策に関する進め方について」にもとづき、NTTコミュニケーションズ株式会社、株式会社NTTドコモ、株式会社NTTぷららの3社は、サイトブロッキングに関する法制度が整備されるまでの短期的な緊急措置として、海賊版3サイトに対してブロッキングを行うこととし、準備が整い次第実施します。 なお、政府において、可及的速やかに法制度を整備していただきたいと考えています。 (NTTグループHPより) |